【ゲストハウスますきち】
・愛知県/瀬戸市
・南慎太郎さん
・ゲストハウスますきち 宿主
ゲストハウスの舞台と同じ、愛知県瀬戸市出身。大学の時に一度地元を離れ北海道へ赴くが、卒業後に、再び故郷に戻り、ゲストハウスの開業を決意した。そして南さんとその周りに集まった300人の手によって「ゲストハウスますきち」が生まれた。
そんなゲストハウスを営んでいる宿主、南さんのstoryやexperienceを紐解く…
目次
Interview
学生時代はなにをしていていましたか?
僕自身が北海道の大学に入学した時に、具体的に何やりたいと思ったっていうよりは、食べ物に興味があって、将来食品関係のお仕事に就きたいと考えていました。けど(近隣の)農学部に行くなら、せっかくなら農業が盛んな北海道の農場でなにかできたらいいなってことで赴きました。実際に現地大学の農学部に入り、講義と部活(ラグビー部)に明け暮れていました。部活に関しては、冬に雪が積もるシーズンはグランドが使えなくて、長期で休みになるので、海外を回ったりして、ゲストハウスに出会うきっかけとなりました。
その当時は具体的な夢を持っていなかったんです。食べ物系を学びたいということで農学部に入ったものの、自分が思い描いていたものとはなんか違うなって思ったんです。大学3年生の後半で同級生が就活し始めた時期に、「どうしようかな。」って悩みました。そもそも興味ある企業がそこまで出てこなくて、エントリシートを出したのが食品系の企業1つと、小説が好きだったので出版社をいくつか出したんです。その機会にちょうど東京に赴き、実際に滞在してみて「…あんまり東京合わんかもな。」って思ったんです(笑)特に出版社が支社の数が少なくて基本的に東京にずっと勤める感じになるから、それは嫌だなって思って、出版社全部取り下げたら、食品系の会社1個だけが残ったんで、とりあえずそこが受かったら(入社するか)考えるし、落ちたら一旦のんびりしてもいいんじゃないかなくらいで最初は思っていました。
結論から言うと落ちたんです。落ちてどうしようかなって思ったときに、僕は地方の地域が好きだったから、そういう所でのんびりで過ごそうと思ってね。どうせのんびりするなら、以前海外に行ったときにお世話になったゲストハウスの仕組みが面白なって思っていたから、ゲストハウスのヘルパーをやってみるのもいいなって思ったんですよね。同級生がどこの企業いいかなって悩んでいる中、僕はどこのゲストハウスでヘルパーしようかなって悩んでいました(笑)しかし調べいくうちに、ゲストハウスを自分で作っちゃった方が面白いんじゃないかって考えるようになりました。「よし、じゃあ就職せずに作るか」ということで、大学を卒業しました。
日本と海外の ゲストハウス をそれぞれ訪れてみて、雰囲気の違いや文化の違いとかってありました?
ぼくは海外よりも日本のゲストハウスに衝撃を受けたんですよ。まず海外のゲストハウスに滞在してみて感じたことは、とにかく面白かったし、値段も安いし、居心地もいいし。けどその一方でホテル泊まるよりは安いからとりあえず泊まろうという感覚でした。一方で日本のゲストハウスに滞在してみると海外以上に地域ごとの独自の文化があってさらに面白かったんです。地域のことを積極的に発信しているのが、個人的には魅力を感じたね。
けど海外のゲストハウスのあの雑さも結構好きで(笑)あの店主の息子かなんかが適当に気怠そうに座ってて、勝手にチェックインして、旅人同士で話せる世界観も好きなんで、丁寧さと雑さのいいとこどりくらいでできないかなって。今も経営していく中でやっているんですけどね。一方で日本の凄い丁寧に周辺地域を紹介したり、人同士を繋いでいくところはそれはそれで凄く面白いしね。まあ経営する人の持ち味でバランスを取っていくのかなって思いますね。
なぜゲストハウスを作ろうと思ったのですか?
最初はヘルパーで全国を転々としようと思って、どこにどんなゲストハウスがあるのかを調べていた時に、ゲストハウスのオーナーさんのブログとかが結構出てきたんですよ。どうやって作ったのか、資金どれくらいかというオーナーさんの体験談をみてみると、「あれ、これ卒業したてでも全然いけるな」って、だったら作った方が楽しいじゃんって思って動き出しました。別にそこまでゲストハウスマニアでもないし、ちょっと面白そうだなって思ってたけどそこまで情熱があったわけではなくて、1回やってみたら面白いんじゃないかって率直に思ったのがきっかけです。そこから実際に収支計画書を作成したり、他のゲストハウスの事例を調べたり、どこで開業するのかを考えてみたりすることで、だんだん現実的になってきましたね。
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若い方が
圧倒的にやりやすい━━━━━。
日本でゲストハウスを開くなら若い方が圧倒的にやりやすいって自分がやってて凄い思いましたね。30になってやるのと、20代でやるのとでは聞こえ方が全然違うからね。
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なぜ "陶器”(瀬戸焼)にフォーカスしたのですか?
もともと地元でゲストハウスをやろうって決めていたわけじゃなくて、ゲストハウスをやりたいなから始まって、じゃあどこでやろうって思ったときに、まず観光地は嫌だったんです。人がたくさん来て、知られている観光地を紹介するということをしたかったわけじゃなくて、あまり知られていない地域の魅力を伝えたい思いがありました。その魅力ってなんだろうと思ったときに、伝統産業がある街だと思ったんです。伝統産業を持つ街の方が、その街に根付いている文化がしっかり残っていると思うんですよ。例えば陶器にしたら、陶器だけじゃなくてその作っていいる職人さんがよく食べていたものが今も定食屋さんとして残っている・その職人さんたちが歩いていた街並みがある・その陶器を運んでいた列車があるというように連なっているから、何か伝統産業がある街がいいなって最初から思っていて、それに当てはまったのが僕の地元(瀬戸)だったんです。
その瀬戸の街を語る上で、絶対に陶器って欠かせない存在なんですよ。そうした時に、陶器にまつわることをこのゲストハウスで紹介したり、イベントとして仕掛けていけたらなと思っていました。そういう活動を行っている中で、同分野で活動されている方と出会い、陶器を簡単に作れる粘土を販売する会社を一緒にはじめたんです。
泊まりに来ていただいた観光客に自慢できる施設内の空間はありますか?
リビングのスペースの床ですね。そこで使われている板は、新しい材料買ってきているわけじゃなくて、近くの陶器作っている所へ行って、そこでろくろを挽いた後にうつわを天日干しするための板をたくさんもらってそれを張ってあるんですよ。改装するときには、なるべく地域にゆかりのあるものを使うことは意識していました。
玄関の入り口にある段差の隙間に埋め込まれたタイルも瀬戸で作られたものなんですか?
そうなんですよ。あれは日本で初めて作られたタイルをそのままの製法で作っている窯元さんがあって、そこからクラウドファンディングを使って提供していただいたものを貼ってあるんですよ。
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最初の1年間はひたすら瀬戸の街を歩いた━━━━━。
最初の1年はひたすら、ぐだぐだ街を歩いていたんですよ。もう建物がボロボロで、ものだらけだったので片付けて、街の中を散歩して、肉焼いてコロッケ買って、会った人と話して帰るっていうのをひたすら繰り返していましたね(笑)そうすることによって人との出会いが生まれましたね、特に若い人との。地方だと若い人が少ないから、そこで出会うことによってだんだん輪ができてきて、コミュニティができていくのが分かりました。まずは何か始める前に、すでに広がる火種のようなものを時間をかけてとっておくことが大事なのかなって思いました。そんときは卒業したてっていうのもあってか、気分は大学生でしたね(笑)
歩いてみて感じたのが疎外感がなかったこと。地方の街ってよそ者が来るとはじくみたいなことも聞くけど、全然そんなことなくて(笑)もともと商売していた街(産業地域)ってこともあるんだろうけど、すぐに受け入れてもらったのが自分の中ですごく大きかったなって思いましたね。
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迷い込んだ感が面白い。
現地でのオススメの楽しみ方はありますか?
まずは街歩きをオススメしますね。観光地みたいに整備されていないし、かといって都市部みたいに計画的なわけでもない、要するに昔のままなんですよね。それこそ昔、焼き物を馬車で運んでいた時の細い路地もそのままで、進んでいくと急に道が出てくるみたいな(笑)なんか迷い込んだ感が結構面白いから、めっちゃみんなにハマるわけではないとは思うんだけどね。目的地にまっすぐ辿り着くんじゃなくて、自分で探りながら街を歩くのも楽しいんじゃないかなって思いますね。
どんな人にこの街をオススメしますか?
裏コンセプト的にも考えている「一人遊びが得意な人」が楽しめるんじゃないかって思っていますね。日本のゲストハウスって結構特徴的で、コミュニティスペースがあって、建物もそんなに大きくないから、みんなで一緒にご飯を食べたりと交流必須みたいになってきちゃうんだけど、僕はそこは必須じゃなくていいと思うんですよ。一人で本を読むのも全然いいし、自分一人で街を散策しに行っても、体験イベントも好きに予約してもいいし、もちろん情報知りたい人は遠慮なく欲しいし(笑)だからある程度自分で自分の楽しみ方を分かっている人がこの街に来ると、いろいろ探索していって面白いんじゃないかと思いますね。
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大工さんにはほんとに感謝しています。
ゲストハウスを作る上で、助けられた人物はいますか??
ほんっとにたくさんいるんだけど、助かったのは特に大工さんかな(笑)開業資金がほんとになかったのでガッツリ資金でこれだけやってくださいなんて言えなかったし、建築学科でもなかったから改築の仕方も分からなかったんですよ。だからまず最初に週に1回2時間だけ来てもらって、アドバイスしてもらって、それを吸収して自分で改築するっていう方法を取っていたね。教えていただいたおかげで、自分が理解するだけじゃなくて、手伝いにきてくれた人にも「ここはこうやってやるんだよ」って自分の言葉で言えるってことが大きかったかな。この形ができたから開業できたし、この形を作ってくれた大工さんにはほんとに感謝しています。
新築建てるんじゃなければ、絶対どっかで補修箇所が出てくるから、その度に発注して直す費用あるかっていったら、ゲストハウスの利益はなかなかでないからね。だからある程度自分で直せないと厳しいのかなって思って、これを機に大工さんから学びました。
学びを生かして新たに作った空間はありますか?
オープンしてから1年後に部屋を1個増やしているんだけど、和室を作ったね(写真下)。ここは大工さんなしで、自分一人で壁塗って、天井貼ったりしたかな。和室が完成して、部屋も埋まるかなって思った矢先に、コロナがきて全然埋まらないっていう(笑)
今後 ゲストハウス の開業を目指すハラちゃんにアドバイスをお願いします!
この業界(観光業)は波があるから、一喜一憂はしないほうがいいし、個人的には最初からそんなに投資しなくていいんじゃないって思うね。
あとはゲストハウスを開いてからはもちろんなんだけど、開くまでもかなり長期戦で色々かかるから、資金繰りもそうだし、建物を見つけるのもそうだし、それを改装するのもそうだし、完成してからのどういう風にハウスルールを作っていこうとか決めることが沢山あるし、準備の時間もかかるんですよ。その色々大変なことがある中で、凄いモチベーション上げてある部分に打ち込んでも、絶対どこかでガタがくるから、ある意味、焦りすぎず無理なくやるのが一番いいと思うな!(笑)
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以上でインタビューの内容は終わりです。南さん改めて貴重なお時間をありがとうございました。1時間の滞在は、学びあり、楽しさありで充実でした。このあとも引き続きお付き合いください。
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column
「もし僕が ゲストハウス 「ますきち」に泊まるなら…」
13:00 【状元】でランチ
→担々麺がめちゃくちゃ美味しいらしいです🍜
14:00 水野駅から尾張瀬戸駅まで電車で移動
→この尾張瀬戸駅が「ますきち」の最寄駅です
15:00 【窯垣の小怪】を散策
→400mの細く曲がりくねった坂の多い路地で現在でも窯屋さんの邸宅が建ち並んでいます。
16 : 30 路地裏に迷い込み、歴史を感じながら【ゲストハウスますきち】に到着
16 : 35 日が暮れるまで、広々とした庭にあるハンモックで過ごす。さらに【ヒトツチカフェ】(施設内にあります)でコーヒーとサイドメニューを注文。さらにくつろぐ。
19:00 路地裏に迷い込みながら、【日本鉱泉(徒歩10分)】で入浴。
20:00 【手打ち蕎麦 志庵(銭湯から7分)】で夕飯。
21:00 夜の瀬戸の小道を散策
22:00 【ますきち】に戻り、お酒を飲みながら、共有スペースに置いてある本を手に取り、今日を振り返る。
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ハラちゃんのメモ帳
ここまでみて下さった方は分かると思いますが、たったの1時間だけでも宿主、南さんの濃い、熱いストーリー、また素敵な考え方を知ることができました。1時間では正直収まり切れませんでした(笑)またその中で今回僕が学ばせていただいたこと、共感したことはたくさんありました。特に感じたことは、若者でも工夫すれば、可能性は無限だということです。お金がないから「もう少し稼いでからにしよう。」、地域との関係性がないから「この地域でやるのは厳しいな…」とか、僕自身とってゲストハウスを作るということはとても敷居が高いものでした。しかし南さんは「1回ゲストハウスをやってみたら面白いかも」という所からはじまり、そこからクラウドファンディングをおこなったり・街を知り、人と出会うために1年間街をひたすら歩いてみたり・施設内に地元の色を添えるために窯屋さんにアプローチしてみたり・地元を面白くするために瀬戸の著名人とも連携をして瀬戸焼を広める活動を行ったり・宿泊者とローカルを繋げる空間(ヒトツチカフェ)を作ったり・宿舎が休日の際に、市民が使えることのできる空間を作ったりしてきました(まだまだある思います)。要するに〇〇をすることができるかも!という小さな気付きから自分の行動力や考えよう次第で、あり得ないくらいの素敵なモノ、空間、そして価値に生まれ変わるんだなって思いました。そんな自分で作った0から1がお客さんやローカルの方に提供できるなんて、大変なことだとは思いつつも、なんだかワクワクしてきました(笑)
そんな素敵な話をしてくださった南さんには感謝しています。そして1時間だけゲストハウスに招き入れてくれて本当にありがとうございました。
ハラちゃん
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